山形蔵王ICは、峠の関沢ICより一つ山形側のICである。
そのIC近くにあるコンビニに配備されていた朝霞の部下は、今となりに止まったクルマが噂の『松本ナンバー』であることに気づき、峠の朝霞に知らせた。
知らせを受けた朝霞に緊張の色が走る。
「やはり現れたか・・・。よし、ここは一騎討ちを挑む! 邪魔なクルマはすべて排除しろ!!」
部下にそう号令すると、たった今調整の済んだユーノスへと向かった。
「さて、赤いマーチ君、早速お手並み拝見と行こうじゃないか。」
朝霞は敵を待ち受けるべく、山形市内から関沢ICに向かう国道286号線の山道にクルマを走らせた。
赤い「しもしゃ」がコンビニに入ったには訳がある。
「ゆっきー、まだ食うのかよ〜。」
「おうそうだ、悪いか!おまえのために『ブラックアウトガム』も買ってやるから。」
ちなみに『ブラックアウトガム』とは、噛んだだけで強烈な刺激を与えてくれる眠気覚ましのガムのことである。
「ガムなら山ほど買い置きしてあるよ。」
「おまえ、眠くなることわかっててドライヴに来てるんかい!!」
二人がこのようなやりとりをしている間に、朝霞軍団は着々と準備をしていたことになる。
「それと今のうちにおぢいちゃんに連絡とっておかないとな。これから電波なくなるし。」
幸村は「おぢいちゃん」こと風原に、某アイドルグループ出演の番組を録画するよう頼んだ。
ついでにトイレも済ませて、準備万端である。
ところが。
赤い「しもしゃ」が向かったのは、山形蔵王ICであった。
これにはまず幸村が驚いた。
「なにぃ、下から行くんじゃないんかい!!」
それに霜片がのほほんと応える。
「うん、だって仕送り入ったばっかりだし。」
「そんなこと言ったって、高速にはおまえの好きな際どいカーブなんてどこにもないぞ!」
「なにぃ!!」
「高速で走るためにつくられているんだからあたりまえじゃん!」
「なにぃ〜、しまったぁ〜!!!」
そして驚いているのはもちろん幸村だけではなかった。
連絡を受けた朝霞にしても驚きには違いなかった。
「なにぃ、高速に乗っただと?!」
「へい、あっしらもそんなことになるとは・・・。」
「なぜICにバリケードつくらなかった?」
「し、しかしあそこにはマッポが・・・。」
「もういい!!」
朝霞は完全に頭に血が上っていた。
「くっ、おのれぇぇぇ〜!!」
同じ走り屋として、山を攻めない『松本ナンバー』に怒りを感じているということも加わり、朝霞は半ばハイパーモードに突入していた。
「・・・謀ったな、シャア!!!(謎)」
これが、赤い「しもしゃ」が後に『赤い彗星』といわれる所以である。
ユーノスは急いで関沢ICに向かった。