「くっ、おまえたち、直ぐ俺のクルマの調整に入ってくれ。そんなやつをのさばらせておいてたまるか!!」
朝霞は燃えていた。
まず、新たな敵は赤いマーチであることである。マーチごときに峠を走らせておくわけにはいかない、というプライドがあった。しかしそれ以上に火がついたのは、相手が『松本ナンバー』であることであった。
もし『群青の流星』の仲間であれば、会稽の恥をすすぐ前哨戦になるかもしれない。
またそのクルマが何らかの事故で『群青の流星』が葬り去られた後釜であるとするならば、自分がとどめをさせなかったことに対して怒りが込み上げてくる。屈辱である。それこそ会稽の恥をすすぐチャンスである。
「天下のユーノス、万が一にもマーチに負けることはあるまい・・・。ふっ、ふふふっ、ふははははは・・・」
そして霜片一行は関山峠を越えて山形に入った。
幸村は感動する。
「いやぁ、このクルマすごいねぇ!」
予想通りの走りなのである。いや予想はすでに超えているのかもしれない。予測がつかないことを予想していたのだから。
赤い「しもしゃ」はつづら折りになっているコーナーを、ドリフトすることなくすいすい抜けていく。クルマが変わっても、そのクルマに合わせた乗り方をする霜片を見て、やはりこの漢、ニュータイプに違いない、と考えていた幸村だった。
今日の夕食は、いつになく楽しいものになりそうである。