(3)
「いやぁ〜、どうも遅くなりました・・・。」
颯爽と、それでいてどこか番頭風の物腰で、その男は運転席から降り立った。
それに続いて、女性が数人クルマから降りてくる。
一説にはサークルにおいて『ナンパ部』の部長なるものを務めているという木之元は、こうして派手に登場した。
「はあぁ。」
幸村は溜め息をついた。軟派というものはこういうものを指すのか、と感心し、また羨ましがった。
「・・・我がサークルにも華があったんだなぁ、シモヒラ・・・。」
「・・・そうだね・・・。」
その光景には霜片も絶句しているようだった。
木之元一行は辺りで小休憩をとった後、
「よし、場所も確認できたから、どこか遊びに行こうか!」
と、女性陣を誘って、颯爽と消えてしまった。
残された男性陣は、唖然とするばかりである。
「・・・うちらも昼飯にしない?」
ようやく幸村が切り出し、沈黙から解放されるのだった。
「昼飯?まだ9時だぜ、ゆっきー。さすが食うために生まれてきただけはある!」
「そんなこと言わないでくださいよ、間下さん!今日は間下さんと焼肉勝負をする予定なんですからぁ!」
「ぬわにぃ〜!!そんな話は聞いておらんぞ!」
「そんなぁ〜、今度ファンクラブの会長の座を賭けて勝負するって、言ってたじゃないですかぁ〜!」
「え゛、もしや俺のファンクラブの会長の座も?」
幸村と間下が盛り上がっている最中に推上も参戦する気でいる。
「なぁ、石津、おまえの持っているファンクラブ会長の座も賭けろよ!」
そして推上は石津も強引に勧誘している。どうやらいろいろファンクラブなるものが存在するらしい。
「・・・ボクも同行しなければならないのでしょうか?」
霜片はかなり弱気である。食い物勝負には風原同様弱いからである。
「そりゃあシモヒラ君、君は運転手だから僕たちに付き合う義務があるからね!」
「あう〜・・・」
超強気の間下には、もはや誰も逆らえない。
この会話の隙に、既に八潮一行は姿を消している。朝霞一行もまたクルマに乗るところだった。
「てめぇら、余を誰だと思っておる?」
「はいぃ!」
朝霞が奇妙な声をあげる。『黒い異邦人』の異名を誇る朝霞も、普段は気が小さい。
そしてこの日の昼食は、焼肉と冷麺三昧となった。
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