(2)
「やぁ、シモヒラくん、久しぶりだねぇ!」
朝霞聖史一行の中には、OBで社会人の間下修(ました・しゅう)もいた。
見れば他にもサークルの人間がいる。とても『黒い異邦人』1台では運びきれまい。
「今回は面白いツアーになってね。」
と、間下が紹介したところでは、どうやら最近はサークル内でもクルマ所有者が増えたらしい。霜片がいかにサークル事情に疎いかがよくわかる。そして間下がいかにサークル事情に詳しいかもよくわかる。
「シモヒラさん、僕も実家からクルマを持ってきたんですよ。」
そう言ったのは、青森出身で朝霞と同期の八潮久志(やしお・ひさし)である。
朝霞のクルマで間下や石津教生(いしづ・のりお)、それから石津や推上と同じアパートに住み、朝霞と同期の潮崎裕司(しおざき・ゆうじ)が乗ってきたようである。
「ういやぁ。」
推上は同じアパートの二人に挨拶をした。
「おまえ、同じアパートに住んでるんだったらうちらと一緒に来ればいいのに。」
石津の意見は尤もである。
「ういやぁ、だって昨日のうちにシモヒラさんに拉致られてたんだもん。」
「くぅ。」
潮崎は苦笑している。
一方八潮は軽なので、八潮のほかには長田友一(おさだ・ともかず)と木尾岱鎮(こんのたい・まもる)の同期二人が乗ってきたようである。
「しかしまぁ・・・。」
幸村は言った。
「よくもまぁ、これだけムサい面子が揃ったなぁ。」
「ゆっきー、おまえ、今自分のことを棚にあげたろう?」
絶妙なタイミングで、間下が突っ込んだ。
「え?俺ムサくないっすよ。」
間髪いれずに潮崎も反論する。
「おまえ白々しいんだよ!」
「潮崎、ムサいって意味わかる?」
「まぁまぁまぁ・・・。」
「おまえ、自分で言うな!」
長田と木尾岱のツッコミが炸裂していた。
「ところで、木之元見ませんでしたか?」
八潮が霜片に訊ねる。
「木之元?」
「あいつもクルマでここまで来るはずなんですが・・・。」
木之元とは木之元昌任(きのもと・まさとう)のことで、八潮の同期である。
「ということは、女性陣をたくさん連れてくるのかなぁ?」
幸村は勝手に想像している。
「う〜ん、俺たち何のサークルなんだろうな?」
羽生は呆れていた。
その時、颯爽と銀色の車体が一行の前に現れた。
そのクルマは栃木ナンバーだった。
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