コースは長い直線である。
途中にある信号をシグナル代わりにし、空港側から国道側へと走るルートで競い合うこととした。
そのように霜片が誘導したのである。
さながら走り屋の長がしもしゃであるかのような光景であった。
走り屋のクルマと並行して、途中の信号までゆっくり走る。
そしてスタートラインに停まる。
いざ、勝負である。
周囲は威嚇するかのようにけたたましく爆音を放出する。
そして霜片は、それをあざ笑うかのような余裕を見せていた。
信号が青になる・・・。その刹那の間に、既に勝負はついたも同然となった。
しもしゃのロケットスタートである。
3秒後には、あっさり突き放していた。
「・・・相変わらず強いねぇ。」
幸村は腕組みを崩さずにそう言い放った。
しかし後部座席組は、襲いかかる加速のGに抵抗するのでいっぱいいっぱいで、周りを見る余裕もなかった。
まもなく前方に、一台取り残された女性のクルマが見えてくる。
そこで初めて、霜片が口を開いた。
「よし、それじゃあやつらが報復なんかにでないように、きっちり灸を据えてやるか!」
そう呟くや否や、その場に急停車した。ゴールはまだ先である。
しもしゃの他のクルーは、半分宙に浮きそうになる。
「あ、停まった(はあと)」
霜片は嬉しそうである。
「おい、シモヒラ〜!急に停まるんじゃないよぉ〜!さすがの俺でも予想できなかったじゃん!!」
助手席で幸村が叫んだ。後部座席組はしゃべる余裕もないらしい。
走行しているうちに爆音が近づいてきた。
「さて、料理してやりましょう!!」
霜片は依然嬉しそうである。そしてしもしゃは急発進した。
「おい、あんなところで停まってやがるぜ、あのクルマ!」
「とことんなめられてんじゃん、うちら。」
「まぁいいや、勝ち誇っているところをボコにしてやろうぜ!!」
走り屋さん連中は霜片の挑発に見事引っかかっているようである。一台置き去りの女性の方には見向きもしない。
とそこへ、前方に停車中のレガシィが急発進した。
「なろぅ、ここで急発進しても、今まで加速してきたオレらにゃかなわねぇよ!!」
しかし彼らの目の前で信じられないことが起こった。
前方のレガシィが右に車線を移したかと思うと、次の瞬間急に左にハンドルを切ったのである。
「よっしゃぁ〜、ガメラ〜!!」
霜片は嬉しそうである。