「やい、てめぇら! このオレを『スケ暴桃子』と知っての狼藉なんだろうなぁ?」
その女性ドライバーは威勢よく啖呵を切った。
「あぁ?『スケ暴桃子』だぁ?この状況で何言ってやがる?頭いかれてんじゃねぇか?」
周りのクルマの中からそのような声がする。
「へっ、『ねもびっつ』さんよぉ、どう?オレたちと遊ばねぇ?」
そうして嘲笑が起こった。
「・・・どうみても、仲間って感じじゃなさそうですね・・・。」
常識派のおぢいちゃんが話題を切り出した。
「・・・どうするよ、シモヒラ?」
しもしゃにおける軍師とも言うべき幸村は、大将たる霜片に判断を委ねた。
今までじっと状況を見つめていた霜片であったが、何かを決意したらしく、急に眼光が鋭くなった。
「・・・みんな、シートベルトをしてくれ!」
その声は、いつもの「オレネムイ」を発動させる霜片ではもはやなく、威厳に満ち溢れていた。
久しぶりに戦闘モードに入ったのである。
その声に威圧されて、後部座席の二人がシートベルトをする。
その瞬間、霜片はしもしゃのエンジンをふかした。
『群青の流星』、覚醒の瞬間である。
その音に何人かの走り屋は気づき、またそのうちの何人かはそれが『群青の流星』であることを理解したようである。
青い車体は走り屋のクルマすれすれを通り、先頭に踊り出る。
挑発である。
「くっ、くそう!!どこのモンだか知らねぇが、ケンカを売られたからには買わねぇわけにはいかねぇ!」
外に出ていた者もみなクルマに乗り込む。
その瞬間、『群青の流星』は急発進した。
この先は直線道路。
街の走り屋さん流に言うと「ゼロヨン」勝負である。
「なっ、このやろぉ〜!!」
蠢きは思い思いに『群青の流星』を追いかける。
『ねもびっつ』は一台取り残されるかたちになった。