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 霜片たち一行が見つけたその車は、すぐに走り出してしまった。
 しかしそのクルマには面白い発見があった。
 後ろの窓のところに文字が書いてある。ピンク色の文字のチラッと見た感じでは、一行には次のように読めた。

ねもびっつ

「???」
 その訳のわからなさ、そしてその走り・・・、一行は意見を交わすことなく急いでしもしゃに乗り込んだ。
 追跡である。

 前方のヴィッツは国道4号線を北に向かって走っている。とはいえ、もちろんノーマルスピードではない。
「シモヒラ〜、ここは様子を見るために、あまりスピード出すんじゃないぞ!」
 幸村が霜片を制止しようとしていたが、もちろん霜片としてもそのつもりであった。
 得体の知れない相手。
 走り屋さんたちに絡まれたり、かと思えばいきなり暴走を始めたり、と分からないことが多すぎるのである。
 そして、いかにも自分は目立ちたいと言わんばかりの、あのピンクの文字・・・。
 風原は唯一の常識派として、ドライヴそのものを制止しようとした。
 得体の知れないクルマについていくなど、常識では考えられない。
 一方権堂はといえば、日ごろのマンネリドライヴから脱出できて幸せなようだった。
 権堂の得体の知れないという点に関しては、今追いかけているクルマといい勝負なのかもしれない。
 大学生の脳みそを持ってはじき出される結論としては、普通は「触らぬ神に祟りなし」なはずなのだが、そのような結論は、風原以外の3人に求められるはずもなく、ついには風原も諦めた。
 ここで追尾をやめるわけにはいかない、そう3人は考えていた。
 特に霜片にとっては、『群青の流星』の名にかけても。

 そんなことを考えていると、クルマはいつしか岩沼市内で国道を外れ、空港の方へと右折する。
 このあたりは、いつだったか原チャの速度測定に訪れた所である。
 そう、既にサークルでは『原チャ王』として英雄扱いされている霜片であった。
 しかし、そこに待ち構えていたのは、そんな英雄譚を語れるような状況ではなかった。
 先程しもしゃにちぎられた街の走り屋さんたちが、文字通り蠢いていたのである。
「だから私は嫌だって言ったんですよぉ。」
 風原おぢいちゃんは弱気だった。
 蠢きの脇をヴィッツが抜けようとするが、すぐ後ろから蠢きに追いかけられるかたちになる。
 前に出ようとも、やはりクルマが塞いでいる。
 ヴィッツはまわりこまれてしまったのである。

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