クルマはそのまま荒浜まで走った。
深夜の誰もいない駐車場に、2台は停まった。
全員がクルマの外に出る。
女性が霜片たちの方に歩みより、口火を切った。
「ありがとう、まさかこれほどの走り屋に出会うとは思わなかった。オレの名前は根杜桃子(ねもり・ももこ)。『スケ暴桃子』ってのが通り名さ。」
へぇ〜、という顔を4人がした。4人も走り屋と話をしたのは、これが初めてであった。
「ボクの名前は霜片雄大。こいつが亘理幸村、そして風原尊志で、権堂義和。」
「えっ、4人も乗っけてたのかい!!」
根杜は驚愕した。あれだけの運動性を要する操作を、自分のほかに3人も乗せて行うとは、到底信じられないことだったからである。
「まぁ、『群青の流星』にとっちゃあ、あんなのわけないよな!」
幸村のその言葉を聞いて、根杜はまた驚愕した。
「あなたが・・・あの伝説の走り屋、『群青の流星』?!!」
なぜか得意げになるのは幸村だった。霜片は恥ずかしそうにしている。
「え〜、いつもシモヒラくん、山形に行って帰ってくるときは所要時間気にしてるじゃん。」
その風原の言葉を聞いて、根杜は確信したらしく、急にしおらしくなった。
「お兄ちゃん、私、ずっとお兄ちゃんに会いたかったの・・・。」
「へ?」
男性陣はみな目が点になる。
「私心に決めてたんです。伝説の『群青の流星』さんに、私を妹にしてもらうんだ、って。」
まだ男性陣は呆然としている。
「あの、『群青の流星』さん、私、お兄ちゃんって呼んでいいですか?」
霜片以外の3人は苦笑した。
何でも、走り屋の中では『群青の流星』はニュータイプ中のニュータイプ扱いされているらしく、また『赤い彗星』は神聖な扱いを受けているらしい。
そんな『群青の流星』に憧れて、根杜は自分の愛車に、自分の名前の一部と車種を交えて『ねもびっつ』とステッカーを張ったらしい。
「とにもかくにも、シモヒラに妹ができたし、これで一件落着か?」
「あぁ、まったくうらやましい限りで。」
幸村と権堂はそんな会話をしていた。
満天の星空に、ひとつの流れ星が駆けていった。