ひと通り障害物を避けきったしもしゃの中では、安堵と興奮とが交錯していた。
クルマの群れは、はるか後方である。
後部座席の風原がまず切り出した。
「すごいよシモヒラ、ゆっきーが『ニュータイプ』って言ってたのがよくわかったよ!」
霜片もまた、いつもの霜片に戻っていた。
「ねぇ、前から気になってるんだけどさぁ、『ニュータイプ』って何?」
「シモヒラ、そんなのもわからないの?ネットで検索すればきっと載ってるぜ。」
なぜか助手席の幸村は得意げだった。
「ところで、さっきドリフトしてきたクルマは、どこに行ったんだろうねぇ。」
先程までぽかんとしていた権堂が、そういえば、というタイミングで話を切り出した。
「おお、まったくだ。シモヒラ、きっとこの先の『にっぱーろく』を右に曲がったぜ!」
幸村はもはや軍師であった。
「う〜ん、どうかなぁ、さっきの走り屋も街の走り屋だったし、追われていたところを見ると、おそらく街の走り屋だから、山には行かないんじゃないかなぁ。」
霜片は一つ欠伸をした。
「まぁ、でも交差点まで追いかけてみますか。」
今度は平穏にスピードを上げていく。
「そういえばゆっきー、ドリフトしてきたクルマって、どんなクルマだった?」
そうだ。目的のものがわからなければ追跡もできない。
「う〜ん何だろ、あの形のクルマには見覚えがあるんだけどなぁ・・・。」
茂庭の山を上りきって下り坂に入った頃、ようやく先行車両に出会う。
が、それは人情避けがウリのトラックであった。
「どうも、見失ったらしい。」
そう幸村が結論を出したときには、既に『にっぱーろく』を東に向かっていた。
当初の目的地、『槻木』に向かうためである。
いつしかしもしゃは鹿野まで戻ってきていた。