しもしゃが走る!
(予告編)

※勿論この話はフィクションです。
但し、登場する人物像(!)は、実在するものとちょこっと関係があります。





「しもしゃ」とは何か?

それは東北の走り屋の中では誰もが怖れる漢、
霜片雄大(しもひら・ゆうだい)の乗りまわすクルマのこと。
ストレートを走らせれば、圧倒的な加速で他車を抜き去り、
峠を攻めさせれば、脅威のドリフトで姿を消してゆく。
その愛車、松本ナンバーのレガシィは、さながら群青の流星。
人はそのクルマを、「しもしゃ」と呼ぶ...

 ある晩、八幡の辺りを自転車で走行していた亘理幸村(わたり・ゆきむら)は、
後方から急速に近づいてくるエンジン音を聞いた。この音は...
「間違いない、ヤツだ!」
 そう幸村が感じるやいなや、一台のクルマが横をすり抜けた。
すり抜けざまにクラクションを鳴らして...
 そして幸村の5,6m先でそのクルマは急停車した。
 運転席のウィンドウが開いてゆく...
 幸村が近づくと、中から声がした。
「やぁ、ゆっきー、今バイトの帰り?」
 やはり幸村の友人、霜片雄大であった。
「しもだい...じゃなかった、シモヒラ〜!!おまえ公道で100km/h出すの、やめろよ!」
「う〜、だってお腹が空いてたんだもん...」
「どうせ俺を拉致って飯食いに行くんだろ? 『ぷくホー』はどうしたんだよ?」
「3日連続だから飽きた。」
 この受け答えが、「群青の流星」と呼ばれる漢なのか、と幸村は内心訝った。
 普段は、どちらかと言うと「カワイイ」という印象なのだが、ひとたびハンドルを握ると、こうも豹変するものか、と思うほど、霜片は性格が変わる。
 仕方なく幸村は、
「わかった、俺の家まですぐそこだから、まずチャリを置かせてくれ。」
とだけ言った。霜片も、
「あう〜。」
とだけ言って窓を閉めた。

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