派手に転んだ原チャのドライバーは、実は石川島であった。彼は山の上の友人宅から帰るところだったのである。
レースが終わり、急いで駆けつけてきた白銀の軽のドライバーを見て、転びながらも石川島は驚いた。
「いってぇなぁ・・・って、おまえ、雅史ちゃん?」
自分のサークルの同期の人間である。お互いが驚き、事情を説明し、そして結論はこうなった。
「僕たち、ずっと友達だよね?」
「雅史ちゃん・・・。」
笑えなかった。当人同士は号泣しながら熱い抱擁を交わしていた。
一方霜片は、自分の素性が知れるのが怖くて、レースが終わった後早々に消えた。つまり事の次第について知っているのは、もはや霜片と推上しかいないのである。
コンビニ前で推上を降ろし、ちょっと浮いている霜片には、来たるべきレースに興奮しているようだった。
(つづき)
「あれぇ? 俺たち忘れられてるんじゃないですかぁ?」
クルマを押しつつ石津はつぶやく。
「はははっ、何でだろうな、あははははっっ・・・。」
朝霞の声も頼りなかった。『白い異邦人』は沈没。朝霞は今後どうなるのか。
ドラマの幕は、まだ引かれない。